卒園アルバム制作のヒント
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2023.10.1
手作りする卒園アルバムと「絵手紙」の共通点とは?
こんにちは、キッズドン!の宗川 玲子です。
今回は山梨県忍野村にある「小池邦夫絵手紙美術館」を訪問した際体験した「絵手紙」制作と、美術館のレビューをいたします。
絵手紙の生みの親-小池邦夫氏
あなたは「絵手紙」を書いたこと、あるいは見たことがありますでしょうか?
旅先で感じた物事を、シンプルなラインで水彩画を書き、文字をしたためて手紙をポストに投函する…といったスタイルは今やすっかり定着しました。
この絵手紙を生み出し、普及させたのが小池邦夫氏です。
残念ながら小池氏は令和5年8月1日に永眠しました。
この訃報を新聞で知り、そこに書かれていた小池氏の一言に心が揺れ、以前にも訪れたことのある絵手紙美術館を再訪しました。
その一言とは
です。
この言葉は、卒園アルバムを手作りする上で「真意」を突いてる言葉であると私は思います。
さて、小池邦夫氏は「絵手紙」を描くにあたり、なぜこの「ヘタでいい、ヘタがいい」をモットーにしたのでしょうか。
その気持ちを理解したく、小池邦夫絵手紙美術館を訪れました。
小池邦夫絵手紙美術館データ
- 〒401-0511 山梨県南都留郡忍野村忍草2838−1
- 電話:0555-84-3222
- 車の場合、東名・中央高速道路を経て東富士五湖道路へ→山中湖ICから国道138号線を富士吉田方面へ
- 常設展入館券(岡田紅陽写真美術館+小池邦夫絵手紙美術館) 一般500円 / 中学高校生300円
- 絵手紙体験-上記金額に+200円(但し指導者不在や当館事情により休止もあり)
- 休館日-火曜日(祝日の場合は開館して翌日休館)その他年末年始や臨時休館日あり
- 駐車場20台(無料)
美術館の特徴
エントランス周辺
山梨県山中湖そばにある忍野村。
富士山の伏流水に水源を発する湧水池が集まる「忍野八海」で有名な場所です。
そこからほど近い場所にこの美術館はあります。
館の名称が「岡田紅陽写真美術館・小池邦夫絵手紙美術館」と連名されてる通り、1つの建造物に2つの美術館が設営されています。
車を停めエントランスに向かうと、たくさんの雄大な樹木や植物が目前に現れ、閑静な美術館の佇まいを演出しています。
美術館内
公募展開催中
入館料を払い奥へ進むと目に飛び込んできたのは「第18回 全国絵手紙公募展「わたしの・あなたの十八番」展覧会の大型パネル。
全国からテーマに沿った絵手紙を募集し、その絵手紙全てを「都道府県別」に展示するという毎年恒例の公募展です。
今年のテーマは「十八番(おはこ)」。
筆者や周りの人の特技や趣味、得意なことなどを描いた1,000点以上の絵手紙が展示されています。
観覧すると驚くほどに力作揃いで、小池氏のモットーである「ヘタでいい、ヘタがいい」とはかけ離れるほどのハイレベル作品も多く目につきます(笑)。
絵と同様に大切な「文字」
絵手紙で重要なのは言うまでもなく「絵」と「文字」のバランスです。
双方がそれぞれの意味を表現するような構成となるのですが、公募展を見ると「お見事」とうなる「文字表現」が多々存在します。
-
- 私の笑顔は日本一よ あっ世界一かな
- まずは胸いっぱい息を吸いお日さまに「おはよう!!」
- 手づくりのぬくもり一番
- 母は花を咲かせる名人です
(全国絵手紙公募展掲載内容より引用)
など、狭いわずかな空間の中に、大胆で人間味あふれる文字が詰め込まれています。
一言添えるだけで、その絵は輝きを増してきます。卒園アルバムで写真にキャプションを添えるとイキイキとして見えるのと同じですね。
次回の公募ではぜひ私も投稿してみたいと思います。(ヘタですが)
この公募展は11月5日(日)まで開催されています。
小池邦夫絵手紙美術館
膨大な公募の絵手紙に圧倒されながら企画展示ホールを後にし、次に足を踏み入れたのは「小池邦夫絵手紙美術館展示室」です。
小池氏は1941年愛媛県に生まれ、東京学芸大学書道科在学中から絵手紙を始めました。
そして「詩・書・画」の三位一体の表現世界を作り出していきます。
1978年から79年に雑誌「銀花」の企画で、1年間に6万枚の絵手紙を描いて注目を集めます。
これをきっかけに絵手紙が世に知られ、以来絵手紙人口は増え続けています。
この展示室には約300点の絵手紙のほか、瓦當(がとう=瓦屋根の一部)などのコレクションが展示されており、絵と文字の表現が、その作品ごとに琴線に触れます。
ここではその作品を掲載することができませんが、下記リンクから作品の一部を紹介している公式サイトページをご覧ください。
大胆な平面構成
小池氏の作品を見ての第一印象は、その大胆な平面構成です。
とても「自由」を感じますが、同時に文字と画、そして「空間」が戦略的に練られている… と、推察するにはおこがましいことを申し訳なく思いながら、自ら推察します。
筆を走らせる隙間もないほどびっしりと描かれた金魚の周囲に、はみ出しながら描かれた細かい文字、左端に寄せて釣竿が描かれ、大きな空間に大きな文字での表現、など、いわば「一切の迷いなく一気に書き上げる」といった小池氏の作画風景がイメージされます。
実際の所の描画方法はわかりませんが、この制作方法は「卒園アルバムを保護者が作成」する際にも大切な心意気だと痛感します。
絵手紙作成と卒アル制作に共通するところ
保護者の方から、私どもキッズドン!に寄せられる相談で「どうしたら上手く作れるか」「センス良く見せるテクニックを教えて欲しい」などの質的向上ノウハウに関する内容があります。
これに対し、下記のブログ記事で紹介しているような押さえるべきポイントをお伝えしています。
ですが、本来であれば「テクニック向上」を意識することなく「ヘタがいい、ヘタでいい」のモットーで、大胆に自分らしい表現で臨ことが大切ではないかと思うのです。
例えば、次のような内容が挙げられます。
- 人物切り抜きはざっくりと
- 四角写真に角の丸みをつけたり辺をガタガタにしてみたり
- タイトルを手書き文字にする
- 「伝わる」ように写真点数を絞り込む
- 文字をメインとしたデザインとする
「上手にできなかったら笑われちゃう」「ヘタなページを作ったら黒歴史になってしまうのでは」などとストレスを背負う必要はありません。
「ヘタがいい、ヘタでいい」それこそが人の温もりを感じる「伝わる」作成品となるんだと信じてやみません。
岡田紅陽写真美術館
展示室を出て対面にある岡田紅陽写真美術館の展示室に入ります。
繰り返しになりますが、この施設は建物の中に2つの美術館が共存しています。
絵手紙美術館ともう一つあるのは「岡田紅陽写真美術館」です。
千円札のデザインの元となった逆さ富士の「湖畔の春」はあまりにも有名。
21歳の時に山梨県忍野村からの富士に出会いました。
この後、生涯を通じて忍野村からの富士山を最も多く撮影することになったと言います。
展示室には、水車小屋の奥に雄大な富士山が鎮座する昭和2年の大型スチールや、富士山の冠雪部分だけ露出を絞り込んだパネルなど、さまざまな富士山に会うことができます。
写真以外に岡田氏が使用したカメラや機材の数々が展示され「よくこの機材でここまで大迫力が表現できるとは」と驚かされます。
岡田紅陽写真美術館の公式サイトのページは下記からご覧ください。
絵手紙にチャレンジ
さて、当美術館を一通り内覧した後、もう少し絵手紙の事を知りたくて、関連文献等が置かれてる学習室に戻りました。
テーブルの上を見ると「絵手紙体験ご希望の方は受付にお申し付けください(お一人様¥200)」という置き紙が。
これはやってみるしかないと、受付に申請してしばらく待つと、絵手紙インストラクターさん(以降、先生と表記)がお見えになりました。
モチーフを選ぶ
学習室には絵手紙のモチーフとなるオブジェクトがいくつもあり、自由に手元に置いてそれを描くことができます。
もちろん空想で描かれても構いません。
今回私たちは「貝殻」と「だるま」を選びました。
絵手紙5つのお作法
先生からはじめに伺ったのは「絵手紙作成の5つのポイント」です。
- 1.ヘタでいい、ヘタがいい
- 2.大きく描く
- 3.よく見て描く
- 4.ゆっくりと線を描く
- 5.心をこめた言葉を添えて送る
ここでとても印象に残ったのが4番の「ゆっくりと線を描く」です。
わざと筆を不安定に持つ
先生から指導されたのは次のような内容です。
その理由は「わざとヘタに書くためのワザ」なんだそうです。
早速教えの通り、筆の先端をつまむようにして書いてみましたが、これがとっても難しい!
ついつい「上手に描く、上手に描く…」という感覚で筆を進めてしまいます。
ですがこの意識が強まれば強まるほど、思うように描けずに困惑する自分との戦い… といった表現になるんでしょうか、とにかく「ヘタ」になってしまうのです。
「ヘタ」が正解ですのでこれで良かれなんでしょうが、先生から「素晴らしい、とってもヘタに描けましたね」と言われると喜んでいいのか複雑な心境になります(笑)。
そんな生まれて初めて経験する(?)葛藤の中、線引きが完了しました。
着色は塗るのではなく「たたく」
12色の顔彩(絵の具)は色の混合をせずに使用するのが基本です。
着色は「塗る」のではなく、筆を紙に「ポンポン」と叩くように色を付けると、質感や人間味が出ていい雰囲気に仕上がるとのこと。
先程の「線引き」同様、つい筆を走らせてしまう衝動を抑え、頭の中で「ポンポン」を呪文のように唱えながら色を加えていきます。
ベタ塗りするのではなく、所々余白が見えてる方がアナログのテイスト感や光の反射を出せて「それらしく見えますよ」とは先生の談です。
文字入れも筆をつまんで
「絵」が描き終えた後に、文字を入れていきます。
先生いわく「どんなに印象的な絵であっても人は文字の方に注目します」。
先日「子どもが注目する卒園アルバムのページは“文字のあるページ”」という記事を書いたことを思い出し、改めて文字の持つパワーを認識します。
印を押して完成です
最後に自分のイニシャルや、ひらがなでの名前の先頭文字が「消しゴム」で作られたはんこうを押して完成です。
ここまでの所要時間は約1時間。絵手紙はそのまま持ち帰っても良し、宛先を記入してポストに投函しても良し…です。
先生からはとても丁寧に指導していただき、時間も相当かかることから、この体験ができて200円ではとても申し訳ない、という気持ちになります。
そんなとても豊かな「絵手紙制作」を、卒園アルバム制作とオーバーラップさせながら体験し、この美術館を後にしました。
周辺は観光地の宝庫
美術館の周辺はさまざまな観光スポットで溢れています。
山中湖と河口湖の中間地点に位置するロケーション、隣接施設は忍者を題材にしたテーマパーク「忍野しのびの里」、近隣には「森の中の水族館」、そして世界遺産である「富士山」の構成資産の一部として認定された「忍野八海」…。
短時間で回遊して満足度も高いファミリー観光に最適です。
観光地の各リンクを貼っておきます。
おわりに
今回は、山梨県忍野村にある「小池邦夫絵手紙美術館」の訪問レビューをしました。
絵手紙作成のモットーは「ヘタでいい、ヘタがいい」。
水彩画を描く際は、わざと筆を描きにくく持ってヘタになるように描く。
着色も「塗る」のではなく「叩いて」色を付着させ、あえて「人が作りました」感を演出する。
絵手紙における「文字」は注目度が高いことから、ヘタに丁寧に「読んでもらう」言葉を探して描く。
など、「人らしさを伝える方法」を知ることができました。
保護者の方や先生が作成する卒園アルバムも全く同じであると考えます。
上手に作ろうと自らハードルを高くして思い悩むよりも、うまいヘタを気にせずに大胆に作り上げた方が喜ばれるかもしれません。
世の中はデジタル全盛時代であり、当サイト内のブログ記事でも、やれデジタル最先端だ、やれ最新アプリだ、やれAIだと「役に立つツールの紹介」を多く行なっています。
ですが、絵手紙のモットーは完璧なアナログモードであり、人の心を確実に伝える「通信手段」と言えます。
生まれた時からスマートフォンやゲームがある子どもたちにとり、絵手紙や、アナログで作成する卒園アルバムは、とても新鮮味があり感銘を受けるのではないでしょうか。
お時間があればぜひ忍野に足をお運びください。
今回も最後までご覧いただきありがとうございます。それでは、また。
キッズドン! 代表 宗川 玲子(そうかわ れいこ)
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