卒園アルバム制作のヒント
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2023.7.29
卒園アルバムの行事ページをカットして構成するその理由とは?
一般的な卒園アルバムのページ構成のイメージとは?
さて、卒園アルバムと聞いて思い浮かべる一般的なイメージは次のようなものでしょうか。
- 1.卒園生一同紹介ページ
- 2.小さかったころ
- 3.春夏秋冬の行事
- 4.運動会や発表会のハイライト行事
- 5.プロフィール紹介
- 6.先生紹介とメッセージ
- 7.卒園式
これに対して「掲載内容を大幅に割愛して作成」するケースが年々増加しています。それは、
というルールに基づく構成です。
なぜこのようなルールを設けたのでしょうか?
また具体的にはどんなページ構成になったのでしょうか?
今回は「行事をカットして作成する卒園アルバム」の特徴について解説してまいります。
- 卒園アルバムの構成に悩んでいる
- 写真販売があるゆえアルバム不要を唱える保護者が多い
- 行事のページがなくて卒アルとして成り立つ?
目次
こんにちは、キッズドン!の宗川 玲子です。
今回は「カメラマンが入る行事をカットして作成する卒園アルバム」の特徴についてのお話しですが、なぜこのようなスタイルが登場したかの結論からお話しします。それは、
という理由からです。
卒園アルバムの思い出の記録はひとつでいい
つまり、既にカメラマン撮影のクオリティの高い「思い出の記録」が手元にあることにより、あえて卒園アルバムとして「改めて」記録に残すことを不要に思う…
という声を尊重した形となります。そしてもう一つ「カメラマンが入る行事掲載カット」には大きな理由があります。それは、
という点です。仮にカメラマンの派遣先会社の「卒アル制作サービス」を利用して作るのであれば、高品位な写真のまま使用できるでしょう。
ですが「写真販売」を前提とした撮影で、カメラマン所属の会社以外で卒アルを制作する場合は9.9割その写真は使用できません。
なぜカメラマン撮影の写真を使用しないのか
それは「デジタルデータでの提供を許可すると販売用プリント写真の売り上げが減少するから」です。
カメラマン撮影による写真販売は次のような定義があります。
- デジタルデータ販売は行うがプリントにはふさわしく無い低解像度設定
(高解像度だと焼き増しでのシェアが懸念される) - 卒園アルバム用となると「高解像度でないと印刷対応不可」のため、どの道提供できない
- カメラマン契約の写真販売企業で卒園アルバム制作サービスがある場合、他社制作への協力はできない
となると、卒園アルバムに使用する写真はどうすれば良いでしょうか?
現実として「先生の撮影」「保護者が園に許可を得て撮影」のいずれかとなります。
当然懸念されるのは、素人撮影による「クオリティ」です。
高性能カメラだけでは良い写真は撮れない
先生は一般的に「コンパクトデジタルカメラ」、保護者は「スマホカメラ」で撮影することが主流です。
2つのカメラとも進化を遂げ、時にデジタル一眼レフに匹敵する写真を生み出すことがあります。
各カメラやスマホメーカーも「一眼レフが嫉妬する」「本物を超える精密画質」などのコピーでその高性能を謳いますが、写真は性能だけで成り立つわけではありません。
カメラマン撮影の写真は、明るさ、構図、背景のボケ感、シャッターチャンス等、素人の撮影とは一線を画すものです。
特に動きの早い園児をレンズで追い続け的確にフレームに収めるのは、職人気質を彷彿させます。
この一連の撮影テクニックを、先生と保護者に期待することには当然無理があります。
保護者会で出た卒園アルバム不要論
ここまでお話しした内容を、私どもキッズドン!でアルバムを制作いただいたAさんからの談話でまとめたいと思います。
私たちの保育園は毎年恒例で「卒園アルバムは保護者が作成」することになっています。
25名の年長児に対して「卒対(卒園対策)委員」が5名選出され、その年のアルバム制作について検討→実践をしていきます。
選出された5名は全員「制作時間やスキル」に余裕がないことから、前年と同じ「ページ構成」「ページ数」「製本タイプ」とし、業者も同じにし、いわば「前例にならえ」の形で計画しました。
今年導入の「写真販売」が議論の発端に
前年までと今年での大きな違いは「カメラマン撮影による行事写真販売」が導入されたことでしたが、その写真は「卒アル使用不可」であったため、卒対委員のやるべきことは昨年までと変わり無しと認識していました。
保護者会で「前年踏襲の形でアルバム制作を行う」旨説明をしたところ、とある保護者から「意義あり」の発言が。
「カメラマンが撮影した写真は各家庭で入手してる前提として、あえて卒園アルバムでその内容を載せなくていいのでは?
カメラマン撮影の写真が卒アルに使用出来ない理由で、先生や卒対が撮影するというのも労力が掛かりすぎるし、クオリティにも期待ができない。
なぜ手元にある高品質の販売写真より低品質の写真でアルバムを作り、高額のアルバム代金を払わなくてはならないのか。
せめて写真販売を行なった行事の掲載を割愛して、その分ページ数を減らし、コストダウンを図る検討をしていただきたい」
との内容でした。卒対側からは「写真は品質の高さだけではなく内容が大切ということもある」「製本タイプの方が保存性が高い」などの意見を出すも、他の保護者も「行事ページ不要論」に同調する空気に変化していきます。
卒対としては一度持ち帰り再検討の形でその場は閉会。卒対委員はその場に残り「ページ構成」の検討を行いました。
行事ページをカットした構成に
その結果「園児ごとの成長を視覚的に見えるような構成」「先生や保護者からのメッセージの領域を拡大」「園の一日ページを拡大」「カメラマンの入らない行事は、行事ごとの集合写真を2ページ分に集約」等の構成でまとまり、ページ数も昨年より4ページ減。
次の保護者会では無事に全保護者から承認をいただき、アルバム制作に着手しました。
Aさんはじめ卒対委員の方の柔軟な物事の考え方が功を奏し、円満に解決したケースだと思います。
行事ページカットによるメリット
Aさんが「行事カットのスタイル」にした理由がもう一つあります。それは
という卒対委員にとってのメリットです。どんな作業が軽減されるか挙げてみます。
- 委員による写真撮影
- 写真選定作業
- 行事撮影に伴う園との交渉
卒アル制作で最も苦労する写真選定から解放
卒アル制作で最も骨が折れるのが「写真選定」と言っても過言ではありません。
複数の委員で撮影を行う場合、仮に運動会のようなビッグイベントでは1,000枚を超える写真が集積します。
そこから約4%に当たる40枚程度の写真を、公平性を持って選定していく作業は、想像を超えて苦痛が押し寄せます。
当初やる気まんまんの委員が、この選定作業を経てテンション急降下となる例はいくらでもあります。
ましてやこの重労働の後に、委員自らの手で「作成」を行うものなら、ゴールの無い海の沖合を永遠に泳ぎ続けるような感覚に襲われます。
各保護者による写真選定が中心となる「行事カットスタイル」
この後、具体的に「行事をカット」したスタイルの場合の「ページ内容」をお話ししますが、基本は「園児個人の成長の記録」が中心となります。
この際、写真は各園児の家庭から提供いただくため、卒対委員が直接手を動かす必要はありません。
この事から、行事カットスタイルは「現実的な効率の良い作業」として理に叶っていると言えるのです。
それでは具体的にはどのようなページ内容となったかを次の項でご案内します。
具体的なページ構成(内容)
はじめにどのようなページ内容となるかを箇条書きしてみます。
- 過年度クラスを1クラス1ページの配分
- 個人の成長記録
- 個人ページ
- 園の一日
- 親からのメッセージ
- 先生からのメッセージ
- 先生紹介+園児集合写真
過年度クラスを1クラス1ページの配分で
写真がどんなに劣化してても、プリント写真のスキャンであっても掲載したいのが「小さかったころのクラス写真」です。
「カメラにしゃべってる友達を不思議そうにじーっと見てる子」「皆んなでピースのポーズするも、指の向きが反対だったり下を向いてたりする子が数人」「永遠に続いてほしいと思わず願いたくなるくったくのない笑顔」など、微笑ましいシーンの連続であり、アルバム本来の価値があります。
クラスごとに1ページ使用し、上半分を占領する勢いで1枚の集合写真を載せ、その下に数点のスナップを載せるフォーマットで統一すると良いでしょう。
個人の成長記録
1ページの二分の一サイズを1園児に割り当て、成長の記録を掲載します。
- 1.入園時の写真
- 2.年中時の写真
- 3.現在の写真
- 4.好きな場所の写真
少し補足します。
比較は楽しい
卒園アルバムを手にした保護者は、アルバムのどこに着目するか?
それは当然「我が子」がどこにどのように写っているかに他なりません。
多少辛辣ですが「我が子」以外の写真には無関心という方がほとんどです。
ですが、このコンテンツのように「比較」をする内容は注目度が高く人気のページと言えます。
「大人になったな〜」「驚くほど変わっていない!」といった感想をこどもと親で楽しむことができるでしょう。
好きな場所の写真
10年20年後にアルバムを開いた時に「載せておいて良かったと」と思う写真があります。
園舎の全景や、節分で泣きじゃくりながら逃げ惑う自分の姿など色々とありますが、その中でも意外性なのが「好きだった場所」です。
- 園庭の特定の遊具
- 外の美しい山が見える廊下の特定の窓
- 職員室の入り口
- 当番で出入りした給食室のシルバー機材の周辺
など、園児は親が思いもつかない場所を「ここが好きだった」と特定してきます。
今後の時間経過とともに、恐らく好きだった場所の記憶を意識することはないでしょう。
ですが、未来でアルバムを開いたとき、その場所を見た瞬間、鮮明に記憶が蘇り、暖かい気持ちに包まれること間違いありません。
個人ページ
個人ページは次のような候補があります。
- 1.1冊づつ異なる個人ページ
- 2.全冊共通の個人ページ
- 3.上記2の場合1ページを何名で割るかを検討
補足します。
1.1冊づつ異なる個人ページ
アルバム制作業者によってできる出来ないがありますが、私どもキッズドン!の場合は、アルバムの特定のページ1ページを「その園児だけのページ」にすることができます。
ちなみに追加料金はかからず、個人別ページが不要であれば「個人別表紙」にすることもできます。
この個人別ページを取り入れた理由は、次のお客様の声をいただいたことがきっかけです。
- 全員の個人ページを掲載すると相当のページ数となり予算に合わない
- 他の園児の個人情報は正直見ない
- 個人別だとオンリーワン的な特別感がある
年長クラスが10名以下の少人数であれば「1ページ1名で全員分を掲載」でもページ全体の占有率は低いですが、大所帯のクラスですと「全員分掲載」は現実的ではありません。
よろしければキッズドン!の個人別ページの詳しい内容をご覧ください。
3.上記2の場合1ページを何名で割るかを検討
全員分のプロフィールを全冊共通で掲載する場合、人数が多ければ多いほど1名に割くスペースが小さくなります。
「個人ページ」「プロフィールページ」と名乗るわけですから、それにふさわしい最低限の内容に仕上げる必要があります。例としては
- 本人の年長期の写真1点
- 簡易アンケート(好きな給食・遊び・将来の夢など)
- 氏名+誕生日
となり、確保できたスペースによって「写真をあと何枚追加できるか」「親かからのメッセージをここに掲載できるか」などを検討します。
プロフィールページに関するブログ記事がございます。よろしければ併せてご覧ください。
園の一日
行事ではないですが、園での一日の流れを時系列で載せていく「園の一日」の採用をおすすめします。
それは未来でアルバムを開いた際「想起(記憶を脳から引き出す作用)」につながる内容があふれているからになります。例として
- 登園のシーン:保護者が当時の送迎の苦労を振り返って懐かしむ
- 給食のシーン:給食の味、弾んだ会話、コロナ禍での黙食のつらさ
- お当番のシーン:役に立つことの嬉しさ、責任を持つことの大切さなどを振り返る
などが挙げられます。登園から降園までの間、掲載する内容はその園によって様々と思いますが、10年後にアルバムを開いたとき「ジーン」とくるであろうシーンを取り入れると良いでしょう。
撮影は専用日を設けて
園の一日はできれば「撮影は保護者」で「撮影専用日」を設けて臨みたいものです。
撮影は保護者の理由は、先生は保育に専念していただき、園児の自然な表情を引き出すことを目的としています。
撮影専用日は「イレギュラーなカリキュラムがなく平常の一日」を先生と相談の上決めます。
ゲリラ的に撮影決行ということは無いと思いますが、園に行ってみたら運動会の予行練習だった… という顛末では本来の「園の一日」を撮ることができません。
撮影日の選定は十分ご注意ください。
園の一日の制作方法を解説したブログがございます。
親からのメッセージ
親からのメッセージの掲載は賛否両論があります。
- 他人に公表するものでは無い
- 直筆を見せることに抵抗がある
- 提出期限が短いと作成する時間的余裕がない
卒対委員からの一方的なお願いではなく、企画の趣旨を事前に通達し、概ね同意をいただいた上で実施することをお勧めします。
回収日までは十分な余裕を設けて
再三他のブログ記事でもお話ししていますが、メッセージや写真提供の依頼を保護者に行う際は「十分な日程」を設けることが必須の課題となります。
最短で1ヶ月、平均1ヶ月半の猶予をお勧めします。
卒対委員以外の保護者は、正直そこまで「卒園アルバム制作」に高い熱量をもっていません。
むしろ依頼ごとを「面倒だな」と感じる方もいらっしゃるでしょう。
その心理を考慮した上で猶予ある日程を設けることは、卒アル制作を円滑に進める上でも重要なことと言えます。
どのように掲載するか
親からのメッセージの掲載は次のような例があります。
- 1.メッセージ専用ページを設けそこに羅列する
- 2.個人ページにスペースが確保できればそこに
ここで考慮すべき点は2.の「個人ページにスペースが確保できればそこに」という点です。
仮に先生からもメッセージをいただく予定で、個人ページには1メッセージ分しかスペースがないとしたら、あなたは親と先生、どちらのメッセージを掲載しますか?
私のお勧めは「先生からのメッセージ」です。
それは園児の心に響く度合いの違いからになります。
メッセージには「褒められる」内容が書かれているのが一般的です。
こどもは親からはいつでも褒められるチャンスはありますが、先生は卒園後は一旦さよならをすることから、このメッセージが基本「最後」となります。
また、最も成長度合いが高く多感な時期の「恩師」からの褒め言葉や教訓は、親の数倍重みを感じるはずです。
このことから、訴求力の高い個人ページへの掲載は優先して「先生」を選びたいと思うのです。
先生からのメッセージ
先生からのメッセージについても「親からのメッセージ同様」に、十分余裕の期間を以てお願いをしましょう。
特に園児個別のメッセージの際、園児数の数が多ければ多いほど想像以上に時間がかかります。
出来れば年度始めに「もし個別にメッセージをお願いするとしたら、いつの時期が良いか」をヒアリングし、それに合わせて計画を進めると良いでしょう。
先生は具体的な指示を欲しがる
「横幅◯◯mm×縦幅◯◯mmの用紙を渡します。そこに250文字以内でメッセージを鉛筆以外のペンで記入してください。また用紙の天地左右は5mmほど空けておいてください」
といった様に明確な指定を提示することで、先生の作業は進めやすくなります。
文章量は特段先生からの要望がない限り、「簡潔に短め」にすると良いでしょう。
あまり長いと先生に迷惑がかかると同時に、メッセージの真意がぼやけて園児に伝わりにくくなります。
掲載スペースとの兼ね合いになりますが、上記のことを意識してお進めください。
先生紹介
先生紹介は、硬い表情で個々の撮影より「弾けて砕けたポーズでの集合写真」が人気です。
変顔、かわったポーズ、いつも園児に見せてるそのままの姿で、全ての先生が集まって集合写真に収まる画風は、圧巻極まって破壊力も絶大です。
撮影にちょっとしたコツが
一人でも多くの先生にお集まりいただくために、スケジュールは撮影より相当前の段階で決めるべきでしょう。
運動会や発表会、卒園式など、ほぼ全職員が揃う日が狙い目と言えます。
そして特に弾けたバージョンを撮影することは事前に公表しません。これは突然告げられる意外性や「あきらめの境地」から本気になって弾ける姿を引き出したいがためです。
普段園児が遊んでるおもちゃなどもたくさん用意しておき、恥ずかしがる先生には、それを渡してポーズを取ってもらうと良いでしょう。
出来れば撮影担当1名、先生への声掛け1名、アイテム渡しやポーズ指アシスタント1名の計3名がいると完璧です。
先生ページレイアウト
集合写真をページの左右め一杯に拡大して掲載を行い、写真の下に適切に氏名表記を配置します。
ボトム側の空間には「卒園式に撮影した園児の集合写真」が良いでしょう。
「みんなそろって最後に撮った集合写真」といったコピーを添えると印象的になります。
おわりに
今回は「行事をカットして作成する卒園アルバム」の特徴についてお話しいたしました。
行事にカメラマンが派遣され、その撮影した写真を販売するシステムがある場合、保護者は高品質な「思い出」を既に入手しています。
改めてその行事に関する卒アルページ制作は不要と位置付け、卒園生の成長や個人ページ、園の一日紹介などのページのボリュームを厚くする…
といった体裁が増え始めています。
この動きは「卒園アルバムがビジュアル中心の“文集”に姿を変え、文集自体は消滅」の始まりかもしれません。
もちろんこの動きが日本全国の保育園幼稚園の共通ムーブメントではありませんが、アルバム制作のアイデアとして紹介いたしました。
ひとりごと
今回の記事を書いたきっかけは、お客様からお預かりする写真を見てると、最近「とある共通した気になる点」が見え出したからなんです。それは、
というシーンです。
つまり「写真販売用」と「卒アル用(または記録写真用)」の撮影する人がそれぞれいるということで、カメラマンの写真がいただけたらどんなに良いことか…
とそのシーンを見るたびに思いにふけると同時に、非効率的な現状をやや嘆いています。
と、つぶやいても始まりませんので、今の現状の中で私たちは何を提案できるかを考え続けていきたいと思います。
今回も最後までご覧いただきありがとうございます。それでは、また。
キッズドン! 代表 宗川 玲子(そうかわ れいこ)
Illustrations Generative Ai
model:Anything Else V4
LoRA:Makoto Shinkai Style LoRA
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