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2023.3.9
子どもミュージカルに見た新しい習い事の姿【観劇レビュー】
今回は小学生の習い事としても注目されている「子どもミュージカル」の観劇レビューをしたいと思います。
また、子どもたちは、ミュージカルを演じる経験を通して何を学び、何を得ることができるのか…など「習い事としての魅力」についての考察も織り交ぜてお話しいたします。
- 子どもミュージカルの評判は?
- お習い事を探している
- どんなレッスンなのかが不安
- 未就学児でも観劇できる?
目次
こんにちは、キッズドン!の宗川 玲子です。
先日「卒園アルバムにのせる“将来の夢”のかわりに“小学校になったらなにを習いたい”が用いられることが多い」というテーマで下記のブログを書きました。
その記事の中で最近注目の習い事・お稽古事情に触れ「ミュージカル」を取り上げました。
今回ご縁があり、記事で紹介した「児童劇団おおきな夢」による公演チケットが手に入り、3月5日東京都渋谷区で行われた舞台を観劇してきました。
公演前と公演後のイメージのギャップ
ところであなたは「子どもミュージカル」と聞いて、どんなイメージを持たれるでしょうか。
私の場合は失礼ながら、公演を見るまでは「幼稚園・保育園での発表会を少し高等にしたレベル」というイメージでした。
たどたどしく、やや棒読みのセリフで懸命に演技をする姿がかわいらしい…
時にセリフを忘れ、歌の歌詞を間違える子がいたりして大人の笑いを誘う…
そんな「ほんわか」した癒しに近いステージなんだろうなと想像していました。
ですが、そのイメージはステージの幕が上がった後に180度くつがえされることになります。
まぎれもないプロの舞台
レビューの総括的なことになりますが、この子どもミュージカルを一言で言うならば
と言い切れます。
その感想は私だけではなく、公演後に退場口に足を向ける大人たちの会話からもうかがえます。
- 「いや〜驚いた」
- 「まさかこれほど感動するとは思わなかった」
- 「照明の使い方がプロ並みで綺麗だったな」
- 「もっと公演回数を増やせばいいのに」
- 「もっと知られるべきパフォーマンスだな」
これらの感想を口にされた方々は、私と同様「たぶん学芸会を高等にした程度」とイメージされてたんだと思います。
ところが幕が開けば、演者、ストーリー展開、舞台美術、照明、衣装などなど、その全てが一級レベルという想定外なことが目の前に…。
そんな感銘を受けた今回の観劇は「初台子どもミュージカル」による「夜空の虹」という演目です。
個人的感想多めですが、魅了された点などについてレビューしてまいります。
ひとりぼっちのねずみとねん土の人形の出会いが…
公演は「初台子どもミュージカル」による「夜空の虹」というオリジナル演目です。
尚、別の劇団における過去の同演目のダイジェスト動画が公開されています。
ストーリーの序盤は下のような内容です。
舞台は人形の世界。
ムームというお屋敷の屋根裏に住んでいるネズミが、天井裏から美しい人形たちをいつも眺めていました。
その美しい人形たちのアイドルは、歌の上手なカナリア。
人形たちはいつもうっとりしながらカナリアの歌を聴いています。
ある日、奥様に連れられて新しい人形「ねん土人形」のアンナが現れます。
しかし、他の人形たちとは違い、地味な身なりのアンナは美しい人形たちの仲間に入れないまま。
そんなアンナを屋根裏から心配そうに見ているムーム。
慰めてあげたいのですが薄汚いネズミのムームには声をかける勇気がありません。
しかしある日…
といった流れで舞台は展開していきます。
一言で表すならば、このねずみのムームとねん土の人形アンナの友情物語であり、身分の異なる人形たちにどのように打ち解けてゆくかも見どころとなっています。
そしてファンタジードラマでありつつ、希薄と言われる現代のコミュニケーション事情や、いじめ問題などの社会背景が物語に重なって描かれているように感じました。
ストーリー展開は全く飽きることなく、心に響くメロディや透き通った歌声が心の琴線に触れます。
そして、未就学児から高齢者までの観客が拍手喝采を送る先は、言うまでもなく「大人ではなく子どもたちの演者」なのです。
ねずみのムーム
本演目の主役である「ねずみのムーム」を演じたのは小学校6年生の武藤ゆいかさん。
劇場入り口で配布されたプログラムには武藤さんのコメントが書かれていました。
尚、私は昼の部を観劇したのですが、本公演は夕方の部もあり、その部でのムーム役は中学2年生の池田ここみさん。
こんなコメントが書かれています。
武藤さんも池田さんも、この年齢にしてこのプロ意識に感心すると同時に「心底ミュージカルが好きなんだ」という気持ちが伝わってきます。
現に私が見た武藤さんのムームは、動き・表情・喋り方、全てにおいて、観客をぐいぐいと引きつけるパワーに溢れていました。
このムーム、例えるならば「天空の城ラピュタ」の主役の男児「パズー」と、ディズニー映画「シンデレラ」でシンデレラに陰から力を貸すネズミのジャックを足して2で割ったようなキャラクターイメージ。(極私的感想ですが)
ひとりぼっちで華やかな世界には踏み込めないけど、いつも心に大きな夢を膨らませ、天真爛漫でいて涙もろい…
そしてそばにいる女性を全力で守り抜くというヒーロー象。
そんな個性ある「男の子の役」を武藤さんは全身全霊で演じ切っていました。(間違いなく池田さんも…)
今回このムームが心を寄せた女性が「ねん土人形のアンナ」です。
ねん土人形のアンナ
キャスト扮するたくさんの人形や鳥のカナリアが置かれる部屋に、主人の奥様が「ねん土人形のアンナ」を連れてきます。
ネタバレを避けるため詳しくお話できませんが、このアンナ、うまく自分の気持ちを伝えることができません。
さらに美しい衣装や着物をまとうフランス人形や日本人形たちからは、地味な身なりをひやかされ、人形たちの世界に入っていけないのです。
さみしさが心にのしかかり、孤独感の演技には、周囲の観劇してる大人も思わず固唾を呑みます。
アンナの見た目の印象でイメージするのは「マッチ売りの少女」。
笑うことを忘れ、自分だけの世界に入り込むも、聞こえてくる美しい歌声に心が揺れる優しさは忘れていない…
そんなアンナを演じたのは小学校3年生の中山さん。
ちなみに夕方の部も同学年の奥山さんが演じています。
小学3年生でここまで重要なポジションを、定員700名レベルの大ステージで堂々演じることができるのか…と、驚かされます。
アンナを演じた両名とも「メインキャスト」は今回が初めてとプログラムに記載されていました。
きっと想像以上の練習をストイックにこなしたことでしょう。
小学校低学年でも観客に感動を与えることができるというのは、この子どもミュージカルの大きな特徴なのでしょう。
アンナは奥様によって置き場所が移され、そこでムームと出会うのです。
夜空の虹とは?
この公演を見ることが決まってチラシを見ての第一感想は「夜空に虹って…どういう風に見えるんだ?」というたわいもない疑問でした。
その意図は本公演のラストシーンで明かされるのですが、ムームとアンナが出会うシーンで、これにちなんだ歌がムームによって歌われます。
アコーディオンサウンドのワルツにのって歌われるこの歌は、胸に大きな夢をいつも抱くムームのキャラクターと相まって、本公演の見どころと思われました。
アンナを勇気づけようとさらにドゥー・ワップリズムでの別の歌唱が続きます。
観客の約6割(目視推定)が子どもであり、舞台の演者はそのこどもたちに「友情の大切さ」を伝えます。
この曲以外にも多くの歌唱やダンスが披露されます。
風の娘によるオープニングソングや、人形部屋のアイドル「カナリア」によるスキャットソング、人形たちのアンサンブルによるコーラスなど、時に繊細に、時にパワフルに、こどもならではエネルギーを感じました。
音楽・歌唱指導の薮内智子氏は、公演プログラムで次のコメントを残しています。
その成果は十分この舞台に活かされていました。私は特段意識していませんでしたが、このような細かいテクニカルの積み上げと実践が、見てるものを自然と魅了する…。
ちなみにこの縦割りでの先輩後輩のつながりは、こどもミュージカルの特徴であるとのことです。
そしてこの子どもたちの演技に華を添え、陰ながら支えてるのは業界トップクラスのステージスタッフの大人たちです。
トップクリエイターによる舞台演出
本格的な舞台美術
人形たちやカナリアの鳥籠が置かれてる部屋をモチーフにした固定セットが置かれています。
階段上になっており、最上部は屋根裏をイメージさせるムームの演技スペースがあり、その下の段にはカラフルな色彩で覆われた人形たち(演者)がポジションします。
三角形の屋根の一部は大きく角度がついており、これは場面によって照明で演出を見せる「背景」を良く見せるためでしょうか。
セットはヨーロッパ郊外の古めかしい住まいの佇まいがあり、エイジング処理(わざと古いように見せる技法)が施されてるように見えます。
舞台には30名近い演者が出演することもありますが、このシンプルな舞台美術はそのパフォーマンスを損ねることなく、公演全体の意匠を創り上げています。
舞台美術は、劇団四季デザイン室を経てフリーとなり多方面で数多くの美術を手がける中川香澄純氏によるものです。
シーンの描写や心境を表現する照明
この照明設計者は、児童劇団「大きな夢」全ての作品を手がける渡邊雄大氏。
そのシーンによって様々なライティングが施されます。
本公演で印象的なのは「基本ダーク系」の色彩で展開していくこと。
考えるには、人形たちやネズミが行動を起こせるのは、人間が寝静まった夜間… という想定なのでしょう。
この世界観を照明チームが見事に創り上げていました。
明るすぎず暗すぎずの全体照明に、メイン演者を浮かび上がらせる微妙な明るさを持つライティングシーン。
刻々と変化するバックスクリーンの色彩など、その美しさはぜひ会場でご覧いただきたいものです。
私が印象に残ったライティングは、世界の人形たちがアイドルであるカナリアに各国のダンスや歌を披露するシーン。
その国ごとにリズム感溢れる照明のオペレーションが施され、目まぐるしく舞台の世界を変えていきます。
演者もメインのダンスシーンとあり、見応えある表現で楽しませてくれました。
このダンスの振り付けは紙谷まり氏です。
公演プログラムにこんなコメントがありました。
このコメントの後、グループワークを積み重ね、役ごとに徐々に自分の表現を掴んできたと書かれています。
本番では華麗なる照明を浴びる中、見事に不自然な動きもなく、楽しんで演じている印象を受け、特にカナリアをセンターにしての人形たちのラインダンスはダンスシーンのハイライトと呼べるでしょう。
迫力と明瞭なサウンド
音の良し悪しはそのホールによって異なるかもしれませんが、総じて言えば「小さい子どもに遠慮のない迫力サウンド」が会場を包みます。
「針が床に落ちる小さな音からジェット機の轟音まで…」と、どこかの映画システムのコピーのようですが、まさにこれに似たレンジ音響が客席に降りそそぎます。
小さな子どもの親子が最前列に座ろうとすると「かなり大音響ですがスピーカーの前で大丈夫ですか?」と、会場係の方が声掛けしているほどです。
音響家は小幡亨氏。劇団四季音響部を経て「コーラスライン」「キャッツ」「オペラ座の怪人」初演公演の音響を担当したスペシャリストです。
このように本格的なステージのもと、友情で結ばれたムームとアンナの物語は進行していきます。
ラスト20分はクライマックスから一気にエンディングにいたる展開であり、大人までもが目を離せぬシーンが続きます。
ネタバレを避けるため内容は控えますが、なんとも言葉にならぬ悲しい結末を迎えるのです。
このラスト20分は周囲を見渡しても「涙・涙・涙」…。
観客のこどもたちのすすり泣きが、舞台で起きてる出来事を、より演出してるように聞こえます。
感心したのは「こんな小学低学年生でもストーリーを理解し、感情を揺さぶられるんだ」という点です。
シンプルでありながら感動を生み出す脚本家は山崎陽子氏です。
小さな子どもも理解できる言葉とストーリー展開、さらに教育や時代の問題提議も含め、子どもたちにハートをグッと握る表現の数々…。
素晴らしい物語と、子どもたちだからこそできる公演を見せていただきました。
こどもミュージカルは情操教育
帰路での湘南新宿ラインの車中で、改めて手渡された公演プログラムを改めて開きました。
今回公演の「初台子どもミュージカル」の出演団員は33名で、その内21名が小学生。そして小学1年から3年までは9名も在籍しています。
この年齢構成で今しがた見た完璧なステージが作れることに驚きます。
そして「舞台に立つ子どもたちはプロの役者でないのに、どうしてここまで大人をも魅了するパフォーマンスができるのか?」
「いったいどうのようなレッスンを経てステージに立つのだろう」という疑問が浮かびます。
この時、開演の前に2名のキャストが、観客に向けて公演時における注意点の説明をしたシーンを思い出しました。
必ず舞台に立てる
それは、この子どもミュージカルは1年に一回の舞台に向けて稽古を行い、入団することにより必ず舞台に立てるという特徴についてです。
この流れをもう少し詳しく知るために、劇団の監修指導を行っている「児童劇団大きなゆめ」のサイトをチェックすると次のような内容が書かれていました。
そして次のような内容も。
週に一回のレッスンで半年かけて演技歌唱に磨きをかけるという点に「急がずあせらずじっくりと育成する」という指導者のスタンスが伺えます。
役の割り振りも講師が「適材」を自らの判断で決めるのではなく「オーディション」形式で行うことから、子どもたちの真剣度合いも変わってくるのでしょう。
恐らく、一つの役を複数の団員が獲得に挑むといったこともあるでしょう。
そして何より、この児童劇団は「スターを生み出すための目的で運営されてるのではない」という点が見えてきます。
子どもにとって大切なもの
児童劇団「大きな夢」の創設者であり現代表である、青砥洋氏は、公式サイト内ではっきりと次の指針を言葉にしています。
そして
とも語っています。
「舞台でスポットライトを浴びてみたい」「歌がうまくなりたい」「大勢でダンスを踊りたい」など子ども、特に小学校低学年の子どもには強いあこがれがあります。
仮にはじめは理想通りにならぬとも、「子どもミュージカル」という特有のレッスンを積み重ねることにより必ず輝かせることができる…
という強い信念がサイトに記載されてる文章から読み取れます。
各人に適した指導、メンバー間での協調性の向上、目的達成に向けたチームワークの結束、一流スタッフとの交流による所作の学びなど、ミュージカルが入り口でありながらも、高度な情操教育を受けることができる場であると言えるでしょう。
観劇した「夜空の虹」の演出である中沢千尋氏は、プログラムでこのようなコメントを記しています。
経験の浅い小学生の団員が、大きな舞台の上で堂々と演技できるのは、信頼のおける先輩の胸を借りて伸び伸びと楽しんでいるからではないか…とも考察できます。
そしてその子どもたちが週一度の稽古で学ぶ「ミュージカルを通じて学ぶことの数々」がなければ、今回観劇したような大舞台の成功はありえないと痛感しました。
続々公演予定、こどもミュージカル
今回は「初台こどもミュージカル」の観劇でしたが、この後も各地の「こどもミュージカル」による公演が控えています。
「夜空の虹」の公演プログラムの最終面に、今後の公演予定が載っていました。
「児童劇団大きな夢」は、全国26ヶ所、700名近い子どもたちのミュージカル活動をサポートしているとのこと。
子どもミュージカルを運営する事業所はいくつもありますが、この「大きな夢」は日本最大のカンパニーとサイト上に書かれています。
お住まいの近くで公演がある際は、足を運ばれてみてはいかがでしょうか。
直近では3月19日(日)の守谷子どもミュージカル(茨城県取手市)、3月25日(土)の新百合こどもミュージカル(神奈川県川崎市多摩区)の上演。
それ以降のスケジュールは下記の「児童劇団おおきな夢」公式サイトよりご確認ください。
おわりに
今回は小学生の習い事としても注目されている「こどもミュージカル」の観劇レビューをしました。
また、それに併せて、子どもたちはミュージカルを演じる経験を通して何を学び、何を得ることができるのか…など「習い事としての魅力」についての考察も織り交ぜてお話ししました。
ステージに立つ演者はまぎれもなく「子どもたち」ですが、上演が進行するにつれ、そのことを忘れさせるほどの熱のこもった演技、歌唱、ダンス…。
この舞台に立つまでに半年以上のレッスンを行い、自らの役に魂を注ぎ込んでいると知ったとき、指導についている児童劇団「大きな夢」の本気度が伺えました。
丁寧に個人に合わせたレッスン、協調性や所作、チームワーク結束の大切さ、感性の向上や自発的な縦割りによる学び合い、一流スタッフとの交流による啓発、コツコツ時間を掛けてスキルを積み上げていく大切さなどなど…
ミュージカルを入り口として入団した子どもたちは、ミュージカルを楽しむという目的以上の大切なことを学んでいくのでしょう。
当初は「子どもたちの楽しい演劇」だろうと会場に足を運びましたが、ここまでプロ意識に徹底し、ハイレベルのエンターテイメントであることに正直驚きました。
そして大舞台に上がるまでの内状を知ることで「これは習い事の新しい形」であることを感じました。
今回は卒園アルバムのノウハウに関するお話しではありませんでしたが、今後も時折このような「中の人」ブログを設けようかと思っています。
今回も最後までご覧いただきありがとうございます。それでは、また。
キッズドン! 代表 宗川 玲子(そうかわ れいこ)
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